式典としての披露式
これまでにも記したように披露式と披露宴に2分される披露パーティも、それぞれの考え方でその区分け自体もかなり自由になっております。プログラム構成を行う中で「何故そうだったのか」を解説しながらパーティ作りのお手伝いをせさて頂きます。
【式典としての披露式】
披露式とはパーティの中の「式典」と言われており、過去には主催者側として「媒酌人の挨拶」「新郎側ゲストの代表挨拶」「新婦側ゲスト代表挨拶」と、式典の要素が強かったのですが、バブル崩壊後、ある雑誌のアンケートで「披露宴に不要な物」の1位が「媒酌人」、2位が「金屏風」。これに主賓の必要性にも疑問が持たれ、要するに披露宴には堅苦しい式典部分である「披露式」は不要との位置づけになってしまいました。
少し時代を遡ってバブル期まで戻ってみます。この時代までは、ほぼ決められた通り婚礼が行われており、この披露式においても然り、進行とそれぞれの役割についてまずお話ししましょう
1,新郎新婦の入場
当時は神前式が中心でしたのでこの入場は和装が主流、紋付き袴に打掛綿帽子、媒酌人夫人のお手引きで入場します。
2,媒酌人挨拶
当時はまだ婚礼は「両家の結びつき」と言われ、中を取り持つ「仲人」として媒酌人の存在が重要でした。媒酌人の由来は中国の「月下氷人」との説がありますが、日本では武家社会の婚姻で両家の格式を整える役割が「仲人」が介在し、それを町民が真似た習慣が現代に受け継がれたとの説が有望です。「媒酌人は結婚後の二人の親」とも言われており、要するに「主催者代表、開宴の挨拶」が、媒酌人挨拶だったのです。この挨拶は、決められたいくつかの話で構成されていたのですが、その中の1つが「二人の生い立ちと馴れ初め紹介」。媒酌人の存在が無くなった今、この部分が「プロフィール紹介」として残りました。そして開宴の挨拶が「ウェルカムスピーチ」に代わりました。
3,新郎側主賓挨拶(新婦) 主賓とは「主たる賓客」となるゲストで、ゲストの中で最上席に当たる方を言います。新郎で言えば勤務する会社の社長や最上上司が多いですね。新婦も勤務されていれば新郎と同じ、他に恩師なども多いですね。その主賓がゲストの代表として祝辞を贈る事を「主賓の挨拶」と呼びます。要するに新郎新婦のゲストの代表者が祝辞を述べるのが「主賓の挨拶」です。この挨拶の「かしこまった」「長い」挨拶が、嫌われる要因ですね。
4、ケーキ入刀
ケーキ入刀の由来はいくつもあります。貧しい夫婦がパンを分け合い、食した説、新郎がサーベルでパンを切り「一生食は守る」宣言した説。他にも俗説はいくつもありますが、披露式にこのセレモニーが入った理由は分かりません。
5,乾杯
日本におけるどの様な「宴」でも、式典の締めは「乾杯」、そして乾杯を以て会食(パーティ)が始まります。乾杯の発声を任された方は、新郎側準主賓、又は最長老のゲストがその任を務めていました。
【式典軽視より気になるゲストの軽視】
この様な流れで約30分の式典が行われておりました。そして時代はバブル崩壊後の経済停滞期に入り、若者たちは多様化を求め、それまでの型にはまった婚礼も崩壊が始まりました。そんな中「婚礼で必要無い物」のアンケートが話題となり、先に記した「媒酌人」「金屏風」とされ、今や媒酌人も金屏風も存在すら認識されなくなりました。そして「披露式は短い方が良い」との風潮から「媒酌人挨拶」「両主賓挨拶」「ケーキ入刀」が割愛され、「新郎新婦入場」⇒「ウェルカムスピーチ」⇒「乾杯」と進め、いち早く会食をスタートさせた後、プロフィール紹介、主賓挨拶等をお願いするパーティ進行が横行し始めました。
堅苦しい式典は極力簡略化する事で、早く「会食」を始める事は悪い話ではありませんが、とは言え礼節を欠いた進行は如何なものかと思います。先に記したウェルカムスピーチ後すぐに乾杯をして会食を始める進行は、多分に式場側の思惑が見え隠れします。と言いますのは、食事の提供は一定の時間がかかるもので、披露式が延びれば必然的にパーティ全体が延び、定時に終える事が出来なくなります。媒酌人は既に過去の物になっているので割愛しても問題ありませんが、問題は主賓。先に記した通り主たる賓客、その主賓の祝辞を、会食直後のざわつく中で頂くことが「非礼」である事を、お招きした側の「ホスト」として考えたいものです。
披露宴は赤ちゃんからご高齢者が一同に会するパーティです。独創性や慣例破棄も結構ですが、ゲストに不快感を与えるプランはやめられることをお勧めします。ちなみに上記進行を多く勧めたコーディネーターのウェディングパーティ、新婦側の主賓挨拶はきちんと「披露式内」の「規定」のシーンで頂いていました。
披露式のプランニング
【披露式で使われる演出】
- 映像演出
- プロフィールビデオ 映画館鑑賞注意のパロディ映像 二人のメッセージビデオ
- 入場演出
- 階段入場 テラス(ガーデン)入場
- ケーキ入刀
シャンパンタワー 鏡開き クロカンブッシュ - バイト
ファーストバイト お手本バイト サンクスバイト
【披露式の演出】
1,映像演出 映像演出とはお二人が入場する直前に映像放映をする演出。ざわつく会場を沈め、入場に注目させる手段として、照明を落とし、光(プロジェクターの映像)と音(再生映像のBGM)の効果で会場を落ち着かせ、この流れで新郎新婦の入場に注目を図る演出。その放映に用いられる映像はおおむね3種類
- プロフィールビデオ お二人の生い立ちを写真ベースで構成したお馴染みの作品。この映像の最後に終えたばかりの挙式のワンシーンを入れる「撮って出し」映像が人気です。
- 映画館鑑賞注意のパロディ映像 映画館での上映前に流される注意喚起映像のパロディ。例えば「写真動画撮影禁止」を「大いに結構」と変えるなど、楽しんでもらう為のメッセージをこのパロディーで面白く伝えます。
- 二人のメッセージビデオ 比較的ウェルカムスピーチで伝える内容が多く、「食事とお飲み物を満喫頂き、楽しんでください」とメッセージを伝えた後、最後に「間もなく入場します」等のコメント後、カウントダウン、入場で終わります。
2,入場演出 入場シーンの演出は、会場のハードに依るものが多く「階段入場」「ガーデンorテラス入場」などがあります。式場選択の要素に入れる事も必要かもしれません。パーティ作りでも触れますが、「最初の入場」「再入場」の入場口を変える事も演出の1つです。放映映像の中にディズニー映画のオープニングを使った入場映像を放映するケースがありますが、おやめになる事をお勧めします。音楽に自由性がなくなった今、あまり音楽を使っての演出は少なくなりました。基本的にはストレートにメイン卓に付きます。メインのお席をソファーにした、従来のメイン卓とは異なる仕様が最近の流行ですが、具体的な使い方は「パーティの作り方」で紹介します。
- 階段入場 この入場が出来るのは、専門結婚式場や邸宅ウェディング、ウェディングヴィレッジ等で、宴会場にブライズルームから続く階段がある施設や、入場用に設置された「飾り階段」を持つ施設に限ります。
- ガーデン入場 これも一部ホテル、専門結婚式場や邸宅ウェディング、ウェディングヴィレッジ等で、ガーデンもパーティスペースの一部、又はテラスがパーティスペースの一部の会場に限られます。
3,ウェルカムスピーチ ゲストをお迎えして開宴を告げるスピーチで、ほぼ慣例化されています。内容に決まりはありませんが、お越し頂いた事へのお礼、食事お飲み物で楽しんでほしい等を、二人の言葉で伝えるのが慣例になっています。短めに二人からのメッセージをお伝えする事も大事です。
4,ゲスト代表の挨拶 さて、ここからが問題のプログラムです。主賓のご挨拶を頂くならここ良いでしょう。基本的に両家のバランスを重視するパーティなので、新郎側からのご挨拶を頂いたら新婦側も頂く事をお勧めします。主賓格のご挨拶を頂かないのでしたら、割愛してよいでしょう。先に記したように、会食後に主賓挨拶を頂くような非礼だけは避けられた方が良いと思います。
5,ケーキ入刀 披露式中のイベントとして注目のシーンですが、近年「会食後中座前」又は「再入場後」に行われる事もしばしば。会食後に回す理由は「披露式の時間短縮」。とは言え乾杯用のお酒を配る時間が必要となるため(通常はケーキ入刀中に乾杯酒のサービスを行います)、現実的には時間短縮にはなりません。再入場後に回すケースは「和装で披露式、再入場でドレス」のパターンで和装で鏡開き、洋装でケーキ入刀を行う懐かしき昭和のパターン継承者です。ケーキ入刀の演出とそれに代わる演出を紹介します。
- ケーキ入場(運び入れ) 色々な理由でケーキ入刀直前にケーキを運び入れる演出。パテシエが運び入れる場合と、コック帽をかぶったお子様がワゴンに乗せたケーキを運び入れる演出が多いですね。ここでのお子様は和やかなパーティ中ですので愚図る事も少なく親のサポートも不自然ではありません。お子様へ返礼プレゼントも忘れずに。
- カラードリップス そもそも「ドリップケーキ」とは、クリームなどでコーティングされたケーキのトップから、マンゴーやストロベリー、チョコレートやキャラメルなどのソースをドリップ(したたらせた)したデコレーションケーキのこと。婚礼ではオレンジやマンゴをベースにしたソースをケーキの頂点より注ぎかける演出で、流行の兆候が見えます。
- シャンパンタワー(ピラミッド) 今や婚礼よりはホストクラブ御用達になっているようですが、以前はプラスチック製のグラスタワーに染料でロゼの色にした液体を注ぎながら、ポンプでグラス全体に行きわたる様なものまで作られていました。今は極一部でシャンパングラスを積み上げて行っているようですが、危険を伴いますので、かなり小型で、会食スタート後即撤収される様です。
- 鏡開き たる酒の蓋に当たる部分を「鏡」と言い、「割る」は意味語なので「開く」とし、昔よりお祝いの席には欠かせない物でした。今でも鏡開きは一部の婚礼で使われておりますが、以前に比べ「小物」の用意が整わないせいか、中途半端な鏡開きが多いようです。本来鏡開きは大きな木鎚(こづち)を二人で持って2回振り下ろすふりをし、3回目で樽を割ります。ゲストには既に升に注いたお酒がご用意され、新郎新婦は自ら飲む物も含む数個の升に柄杓で樽酒を注ぎ入れ、升酒で乾杯にを行います。
- クロカンブッシュ シュークリームをカラメルや飴などの糖衣で貼りつけ、円錐型に積み上げた塔のようなデコレーションのことを「クロカンブッシュ」といい、海外では縁起物とされ、ウエディングケーキの代わりに取り入れているカップルが多いようです。日本でも一時流行りましたが、大きなウェーブ迄には至りませんでした。飴でカチカチに固めたクロカンブッシュを金槌で割っての入刀や、柔らかくカラメルで作られた物では入刀後シークリームをつまみ上げ、お互いに食べさせる「ファーストバイト」が可愛いと一部で人気でした。
6,各種バイト 事の始まりは、ウェディングケーキが巨大イミテーション時代から、フレッシュ生ケーキに移った頃から、「食生活は俺が一生守る」「一生おいしい料理を作ります」とハラスメントに抵触しそうな逸話で始まったのがケーキを食べさせ合う「ファーストバイト」。今では多くの婚礼で取り上げられています。このファーストバイトも多くの「ゲスト参加型」に後押しされるようにいくつかの「バイト」が行われています。
- ラストバイト 両家の母親が新郎新婦に「最後の食事」としてケーキを食べさせるバイト
- お手本バイト ご両親にお願いするバイト。結婚の先輩としてご両親に「お手本を見せて」との意で行われます。
- サンクスバイト ゲストの中でお世話になった方、例えばキューピットになった友人知人。二人を陰で支えた友人。お世話になった下宿のご夫妻。感謝の気持ちを込めてご協力頂くバイト。
7,乾杯 乾杯の発声人は準主賓の方か長老にお願いするのがセオリーですが、時短の発想で新婦側の主賓挨拶を「乾杯の発声を兼ねて」ここでお願いするケースが増えています。勿論挨拶が終わるまでゲストは着席のまま拝聴します。そして乾杯が済むとお料理が運び込まれ、パーティが始まります。
以上が披露式で行われる進行と演出ですが、色々と組み換えが多くなっていますので、いくつかの進行パターンを添えておきます。
披露式の進行パターン
スタンダードパターン(所要時間概ね30分)
- 入場
- ウェルカムスピーチ
- 新郎側主賓挨拶
- 新婦側主賓挨拶
- ケーキ入刀
- 乾杯
時短披露式パターン1(所要時間概ね25分)
- 入場
- ウェルカムスピーチ
- 新郎側主賓挨拶
- ケーキ入刀
- 乾杯兼新婦側の主賓挨拶
時短披露式パターン2(所要時間概ね25分)
- 入場
- ウェルカムスピーチ
- 新郎側主賓挨拶
- 乾杯兼新婦側主賓挨拶 (ケーキ入刀はお色直し中座直前)
変則披露式(所要時間概ね15分)
- 入場
- ウェルカムスピーチ
- ケーキ入刀
- 乾杯(新郎が発声、重鎮の挨拶は一切なし、後半も余興のみかゲームだけの会食が中心パーティ)
このような披露式進行の中で諸々演出を加えて行かれると良いかと思います。ゲストに対する非礼もなく円滑に進行すると思います。
今日はここまで
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